JR東日本の経営 -乗務員-
2025年 10月 18日
鉄道は走らせて運賃収入を得るのが基本となる。
鉄道を走らせる現場第一線の社員たちと言えば、乗務員。
◆乗務員手当を廃止
問題となっているJR東日本の新しい人事賃金制度問題。まずは乗務員の手当廃止。
現在は乗務した距離に対して、運転士・車掌・ワンマン運転の運転士に対して乗務手当が支給されている。1キロあたり2~5円の範囲だ。プラスして働いた分だけ深夜早朝には増し賃金となる。乗務員は乗務列車へ向かう徒歩時間や乗務前後の準備時間、運転士であれば本線運転のほかに入換運転や出区点検といった部分も勤務時間として手当が支給されている。当然と言ってしまえば当然。
JR東日本は乗務員の手当を段階的に廃止縮小してきた。例えば"旅費"。宿泊地が自分の職場以外になると手当が支給されたり、出先で一定時間以上滞在した場合は"行先地手当"が支給された。移動すること自体が業務であり、行先地で食事などの休憩をしたり宿泊しなければならない特殊な業務なのでその負担に対しての手当だったのだが、現在は廃止されている。別の記事で後述するが、安全に関わる"入区点検"や"目送(もくそう)"、"出区点検の余裕時間"まで廃止。乗務列車に乗り継ぐ際に余裕をもって出場するために到着3分前までついていた手当も廃止。つまり早めに乗り継ぎ位置に出場しても賃金は支給されず「列車の到着までにちゃんといてね」という話になった。
これは鉄道の安全安定輸送に関わることだ。もし点検で車両トラブルが発生すれば別の車両を充当したり応急処置をしたりといった時間も無くなるので列車の遅延や運休が発生しやすくなる。旅客から案内を求められれば対応するために乗継交代位置までたどり着かなかった結果、列車の遅延が発生するといった具合いか。
それだけならまだしも、来年3月の賃金制度改正で"乗務員のサブスク化"が始まる。深夜業に携わる社員への手当と運転業務に携わる社員への手当を月額固定で払い、あとは乗せ放題ということになる。職場でデスクワークをしても東京駅と熱海駅の間をひたすら乗務員として往復しても、時間でのみ賃金が支給されるだけ。JR東日本会社はこれに対して「乗務員の仕事も大変だが、大変なのは駅業務も一緒だ」と"乗務員勤務の特殊性"を一切考慮しなかった。これは兼務(乗務員と駅業務または内勤業務)させるにあたり支障していた"兼務すると賃金が減少する"という現象への対策となる。両立を支援するために手当を手厚くするのではなく、乗務員しか担当しない社員の賃金を減らしてしまうという手法を選んだようだ。結論、会社は認めていないが、ほぼ全ての乗務員が手当の面で減給ということになるだろう(入社年度が若い社員に関しては、他の面で賃金アップになるために年収ベースで言えば当てはまらないが)。
◆モチベーションが下がる乗務員
当然のことながら様々な面で賃金制度が改定されるが、主に現場第一線を担う乗務員はモチベーションが大きく低下しているようだ。前述の通り、入社年度の若い社員は年収ベースで言えば他の部分で大きく賃金カーブが持ち上がるために賃金の減少は意識しないと思うが、中堅からベテランに関しては大きく賃金が減少することが予想される。他の章で述べたいと思うが、居住手当(現行の都市手当や家賃補助など)改定で主に茨城県・栃木県・群馬県・山梨県に住居を構える首都圏勤務社員は大きく月収ベースで変わってくるだろう。駅職場やメンテナンス職場等からは"乗務員は優遇され過ぎだ"と目の敵にされていた。そして労働組合が弱体化して会社経営のチェック機能が働かなくなった今、乗務員はへの待遇は大きく下げられる結果となる。
要員不足が慢性化して休日出勤、乗務以外の業務での超過勤務が増える中、所定の乗務勤務自体がどんどん膨らんでおり、定時出社・定時退社でも超過勤務が月数十時間発生している現状だ。この点は鉄道会社のみならずバス会社なども抱える問題となっている。ただでさえ不規則勤務というだけで入社希望者が減少する中で現在鉄道を支えている現場第一線社員は疲弊している。泊まり勤務という特殊な働き方の特徴として"ノーペイ時間"が多い。乗務の合間が開けばノーペイ時間が発生し、夜間の仮眠時間ももちろんノーペイとなっている。拘束時間は24時間を超えるケースも出ており実労働時間との差が開けば不満も多く出るだろう。
今までのように鉄道会社の花形"乗務員"だからと言って我慢できる限度を超え、社員の定着率の良かった会社だったのだが実際に離職する社員が散見されるようになったと聞いている。中堅からベテランの乗務員の中には割り切るために"ほどほどに手を抜いて働いてバランスをとるか"という話が出ているようで、JR東日本も鉄道の安全性が脅かされる芽となりかねない状況だ。プロ意識という言葉では維持できなくなるモチベーションの低下具合いを垣間見た。
◆脱鉄道を目指す会社
JR東日本は2026年3月、"(消費増税のタイミング以外では)分割民営化以降初めての運賃改定"を行なう。安全に対する投資や技術革新、バリアフリーのさらなる拡充のための原資とするとしているが、ここに少数精鋭で複数任務を担って働いている社員への待遇を改善するという文言は皆無だ。一方で高輪ゲートウェイシティを中心とした"広域品川圏"の再開発には莫大な資金を注入している。コロナ禍の大赤字で喘いでいた会社はどこへ行ったのだろうか。有識者からも今回の運賃改定に関しては異論が出ている。会社全体でみれば大きな黒字が発生しており、企業努力で乗り切れるレベルなのではないだろうか。
広域品川圏=大井町駅・品川駅・高輪ゲートウェイ駅・浜松町駅の周辺を中心に不動産に莫大な投資をして開発を実行している。その足元を走る山手線や京浜東北線は、数年後には完全にワンマン運転。山手線にいたっては"ドライバレス運転"も前倒しで実施する予定だ。乗務員から不満が噴出するが、あと数年を乗り切れば乗務員を大幅に削減できると見込んでいるのだろうか。一足先に南武線(6両編成)と常磐線各駅停車(10両編成)でワンマン運転が実施された。ラッシュ時間帯の遅延の常態化やドア開閉に関するトラブル、南武線では快速電車の通過駅停車や停車駅通過などツーマン運転であればチェック機能が働き防げたであろう事象が多発している。発生する事象に対してのハード面での対策は少しずつ打っているだろうが、これだけ負荷をかけている社員に対して訪れる賃金改定は少し気の毒に思われる。
デスクワークも運転業務も同じぐらい大変だから、同じ手当でいいだろう。他社にはなるがJR福知山線脱線事故で出された事故調査委員会の最終報告書に謳われていた"乗務員勤務の特殊性"は、JR東日本会社ではことごとく否定していく方向なのだろう。
今回は様々な事象に先駆けて"乗務員"に関して述べた。JR東日本の現役社員の声を聞いて構成させてもらった。今後もいろいろな方面でJR東日本の現在を書いていきたい。先日、JR高崎線上尾駅でホームと反対側のドアを車掌が開閉した。プロ意識に欠けているのか安全レベルが低下しているのか、JR東日本の乗務員のレベル低下が危惧される事象だ。同時に国家資格が必要な運転操縦は運転士、ドア開閉や車内放送を含めた列車防護係員は車掌、出改札業務は駅係員といった分業によって高度な技術知識が維持されていた鉄道員。社員減少や経営環境の変化によってマルチタスク化されることにより全てが崩壊する危険性が出てきたのでは。先日、駅構内を歩いていた社員に出口を尋ねたところ誤った案内がなされた。名札を見ても駅員なのか乗務員なのかもわからず、そもそも表に出ている駅員が少ない中で誰に何を聞いていいのかがわからない状況だ。グループ会社への業務委託などで分業化も進んでいるのだろうが、素人が駅案内をしている、素人が乗務しているという状況が刻一刻と近づいているような印象を受けた。
記事の内容に関しては、中の人への独自アンケート。記事の内容に関する問い合わせはJR東日本になされないようお願いいたします。また、タレコミに関しては随時募集しております。
by alpha2025
| 2025-10-18 09:05
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